破壊シリーズというAVが人気だったワケ

ちょっと前に、「破壊」というシリーズ物のAV動画がブームになったことがある。

見たことがある人もいると思うけど、女性を徹底的に痛めつける、いわゆるキワモノの動画だ。

女にイラマチオさせるのなんか当たり前で、その上殴ったり蹴ったりするから、出演するAV女優は体じゅう青アザだらけだった。

破壊なんて名前をつけるくらいだから、イラマチオも普通じゃない。

何人もの男優が次々と女優の口の中にチンポを突っ込んで、髪の毛をつかんで乱暴に頭を揺さぶるから、女優が軽い脳震盪を起こしちゃってるのもある。

マ○コにチンポ入れるのだって、一人終わると次の男が女優に乗っかって、終わるとまた次っていう具合に延々と繰り返すから、女優だって相当キツイ。

まぁ、そのおかげで苦痛にゆがむ女優の表情がリアルだから、そのへんのホンモノのレイプ物より見応えがあるともいわれていた。

それもそのはずで、このシリーズはよく見ると企画モノとわかるけど、「あれ、ひょっとしてこれってガチなんじゃねえの」と思わせるきわどい演出がミソだった。

実はこの破壊シリーズみたいなバイオレンス物は、昔からポツポツとあることはあった。

しかし、内容がハードすぎてちょっとヤバいといわれていたんだ。

どの制作会社も当局に目をつけられたくないから、売れるとわかっていてもあまり作りたがらなかった。

当時はまだAVファンも「ウブ」で、あんまり激しいものだと、「こんなAVがあるけど大丈夫ですか」って警察に通報する人がいたらしいんだ。

すると警察も一応取り調べるわけだけど、このAV自体は問題ないとしても、そこを取っ掛かりにして制作会社を調べられると困ることがあるわけだ。

AV業界なら、警察に知られたくないことのひとつやふたつくらいみんなあったからね。

特に、暴力団と絡んで裏ビデオを作っているような制作会社はホントにヤバいから、絶対こういうシリーズには手を出さなかった。

やるならパクられる覚悟でやらなきゃならないからね。しかもそれだけじゃない。

もしも暴力団にまで捜査の手が及んだら、制作会社の社長は責任を取らされる。

つまり、やるなら指の１本くらいくれてやる覚悟が必要だったわけだ。しかし、誰もそこまではできない。

だから、こういうAVがたくさん作られるようになったのは、ネットが普及してからじゃないかな。

いわゆるサンプル動画ってやつが急に増えた。これなら、モザイクさえかかっていれば何の問題もなく配信できる。

警察も、サンプル動画の中身まで細かく調べたりはしないからね。

それで深く静かに広まって、やがて破壊シリーズといヒット作が出てきたわけだ。

こうしてみると、AVの需要拡大にはネットの力が大きいんだよな。

だけど、最近はAV業界も伸び悩んでいる。どんな企画を考えても、すでに出尽くしてるもんな。

その頃AV業界では、「死んだ女とやる」か、「やったあとで女を殺す」くらいしか新しい企画がないとさえ言われていた。

ところで、死んだ女とやるパターンは、海外では猟奇モノとしてマニアに定着しているから、見たければ海外サイトにアクセスすればいつでも見れる。

やったあとで女を殺すパターンは、最近では「●●●●が似たようなことをやっている」というブラックジョークが流れているらしい。

まぁ、こんなのは日本で作れるわけがないから、ホントにAVのネタは出尽くしちゃってるわけだ。

現在、破壊シリーズのようなバイオレンス物専門のAV女優がいるかどうかは知らないけど、昔は何人かいた。

普通のAVよりハードだから、ギャラも相当よかったらしい。

そのギャラに釣られて、顔やスタイルがイマイチであまり売れていないAV女優が、このシリーズに出演していた。

だけど、いくらギャラがよくても、そんな仕事を請ける女優は、あまり多くはない。

なぜなら、体に青アザが残ると、破壊シリーズ以外の撮影が入ったときに困るからだ。

そのため、破壊シリーズの女優は次の仕事も同じシリーズの撮影を請けることが多かったようだ。
これなら、青アザがあっても問題ないからね。

事実、破壊シリーズの女優を裸にすると、前の撮影で殴られた青アザがまだ消えずに残っているというから、そのすさまじさがわかる。

だけど、女優の体に青アザがあったって、撮影現場ではまったく気にしない。

もちろん、見ているAVファンだってそんなことはどうでもいいんだ。

ファンが見たいのは、いかに女が壊されていくかだけだからね。

こういうバイオレンスシーンがあると、青少年を暴力に駆り立てるからよくないというけど、少なくともAVに限っては逆じゃないかと僕は思っている。

破壊シリーズファンの男たちは、徹底的に女を痛めつけるシーンを見てスッキリするんだよ。

スッキリしたら、もう自分が暴力を振るおうとは思わない。

だから、むしろAVのバイオレンスシーンのおかげで、ちょっとだけ世の中からリアルな暴力が減ったんじゃないかと思うんだ。

もしそうなら、AVだってたまには世の中の役に立ってるわけだ。


文｜工藤タツオ（AVカメラマン）

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